
どうも。
金融機関に勤める人間として、当然のことながら外貨建て金融商品も普通に取り扱いをしているFPひろき(@fp_hiroki)です。
2020年2月21日の日経新聞の記事が気になりましたので取り上げます。
なんだかまたしても、金融機関の金融リテール営業職に専門資格取得が義務付けられる動きになってきました。
それは何かというと、
『外貨建て保険商品』
の販売について。
現場の人間の感想としては、
といったところです。
Contents
生保・銀行業界は反発するも、早速今年の10月に『外貨建て保険』試験が実施されます。
昨年11月頃から、業界内において、水面下で以下のような激しいやりとりが行われていたようです。
11月上旬、東京・丸の内の生保協会の会議室で議論が噴出した。生保側が全国銀行協会や全国地方銀行協会の担当者らに、外貨建て保険を販売する募集人に対する業界共通の資格制度の創設を提案したところ、反発の声が相次いだ。
記事を読むと、生保業界側が銀行業界に資格試験の導入を提案したところ、銀行側からの激しい抵抗があった旨が記されています。
生保業界が銀行業界にこの『外貨建て保険』の試験導入を提案した背景に、銀行窓販で販売した外貨建て商品の苦情件数の多さをあげてます。
生保協会によると、銀行窓販における18年度の外貨建て保険販売の苦情は2543件と前年度比3割増だった。販売増加に伴い苦情は増えており、国民生活センターや金融庁も問題視している。大半は為替変動による元本割れリスクなど「説明不十分」が占めるため、売り手のリテラシー向上策として資格創設が浮上した。
銀行業界側の言い分としては、
「既存の試験(変額保険試験)の見直しで対応出来ないか。」
などと抵抗をしたとのことです。
結局、水面下で激しいバトルが繰り広げられた末、2020年10月から外貨建て保険の試験は実施する方向性でまとまりました。
そして2022年に販売資格者登録制度を開始するとのことです。
『外貨建て保険』でトラブル続発。トラブル回避の方策として試験が導入されます。
とにかく『外貨建て商品』のトラブル、クレームが後を断ちません。
僕も外貨建て商品を多く扱って販売してますが、外貨建て商品を販売する際は、細心の注意を払い、わかりやすく誤解がないように説明することを心掛けています。
どのようなクレーム・トラブルが多いか...。
業界では以下ようなことがよく言われ、注意喚起をされています。
-
- 高齢者が契約者となるケース。
- 為替リスクをしっかり説明しないで契約を結ぶケース
- 元本保証と誤認させて契約を結ぶケース
などが主だったところです。
それでは順番に詳細を見ていきましょう。
1高齢者と『外貨建て保険』の契約を結ぶときは細心の注意を払わなくてはなりません。
高齢者は一見しっかりしているように見えても、実は認知症だったりします。
後からこのように気が付くことはざらにあり、クーリングオフをよく受け付けるのを目にします。
契約時にすべて理解してくれたと思っても、数日経つと何も覚えていない...。
その後家族が窓口に乗り込んできてクーリングオフの手続きをする...。
このようなことは珍しいことではありません。
なので高齢者と契約を結ぶときは、
-
- 必ず家族に同席をしてもらい、契約内容を共有し、契約時も立ち会ってもらう。
- 契約に至るまでに、必ず複数回の説明を実施し、一時の感情で契約に至らないようにする。
- 全保有金融資産を把握し、たとえ契約に至ったとしても、十分な流動性資金が確保できていることを確認する。
この3点は絶対に遵守するようにしています。
2『外貨建て保険』において為替リスクは付き物。販売者には、為替リスクという後ろめたさを堂々と見せる勇気が求められる。
『外貨建て保険』に為替リスクは付き物です。
契約時の時よりも円高が進めば積立金額は含み損が生じ、円安になれば逆に含み益が出る。
その不安定さをお客様に伝える不安感を販売者が払拭できないことが、トラブルの原因の一つにあげられます。
このように、未熟な販売者は、契約を結ぶことを最優先に考え、お客様のことを二の次にしがちにする傾向にあります。
高い金利などのメリット面ばかりを伝え、為替リスクなどのデメリット面を濁す...。
完全に販売者失格です。
それ以上に深刻なのが、銀行窓口担当者の販売者としての未熟さ。
上記で前述してますが、『外貨建て保険』販売のトラブルの多くが銀行窓販で多発しています。
まあ無理もありません。銀行の窓口担当者はやることも覚えることも非常に多いですから。
また、取扱商品も多岐にわたり、金融知識の習得面においても物凄い負担が掛かっているのが現状です。
それこそ、保険会社の外交員の様に、販売に特化しているわけでないので、販売面の不備が出てくるのは想定の範囲内でしょう。
まさに浅く広く...。
この現状に警鐘を鳴らしたのが生保業界側というのもこれまた頷けます。
そのような立場の者が、商品特性やマーケットのことまで精通しきれていないで『外貨建て保険』を販売しているという現状こそが、トラブルの元凶ということでいままさに問題視されているのです。
また、かなり改善が進んだとはいえ、金融機関によっては、窓口担当者にまだまだ大きな販売ノルマを課しているケースも見受けられます。
販売ノルマ達成のために、デメリットを包み隠すような販売手法が横行している可能性もあり、それが顧客である契約者に負担をしいているのです。
決してそんなことがあってはなりませんが、それを改善していかなくてはならないのが業界の課題なのです。
金融庁が問題視しているのも無視できません。
3定期預金と誤認させ、元本保証があると思わせる悪質なケースも散見される。
基本的には為替リスクがある以上元本が保証されていません。
更にいうと、保険である以上は解約をすれば解約返戻金が戻ってくるとはいえ、ほとんどのケースで元本を割り込むのも常識です。
しかし、この不都合な真実を濁して説明し、あたかも預金であるかのように装って契約させるケースもあるようです。
ここまでくると最悪ですね...。
これは、契約に至るプロセスがルールに従って行われていない可能性もあり、金融機関としてのガバナンスも問われかねない事態です。
『外貨建て保険』の販売資格化は一部反対も叫ばれていたが、私見としては概ね賛成である。
積立金額が変動する変額保険もリスク商品ということで販売資格制度を敷いています。
それでも問題になっていることから、『外貨建て保険』の販売資格化はあまり効果的ではないとの見方もされています。
しかし、その変額保険において、トラブルになっているほとんどのケースは、外貨建てということを考えると、『外貨建て保険』の販売資格は必要なのではないかと思うのです。
いくら金融機関に勤めているからとはいえ、外貨建てに対する怖さを知らず、知識面でもおぼつかない金融機関職員が多すぎるというのが僕の見方です。
また、顧客本位の営業が行われていない実態が浮かび上がり、今後更に金融リスク商品の販売モラルも問われます。
この試験を機に、いま一度足元を見つめ直した上で、しっかり知識とモラルを身に付けて自信を持って販売できる様な体制構築が求められます。
では今日はこのへんで。じゃ。^^